小さな椅子と文字をなぞること

Posted on 2012/12/30

大掃除を手伝う。

ふと、わたしが子供のときに使っていた椅子があった。かつてはわたしが食べるときに使っていた椅子だけれど、いまは洗濯物を受ける椅子になってしまっている。一種のアフォーダンスといおうか。

座ってみるととても小さい。お尻が納まるかどうかという感じ。もちろんわたしの身体が大きくなったからだけれども、逆にいえば、あのときの小さかったころの自分の身体を想起する。逆行する時間。

夕食のとき、母からおもしろい話をきいた。医学書院から出たインタビューについての話題になったのだけど、そのときに母が言っていたのは、マンホールの話。

わたしが3歳のころ、母に連れられて道を歩いていると、マンホールの蓋が道路にはまっていて、そこには「ガス」と書いてあった。それをみたわたしは、指で「ガス」とずっとなぞっていたという。他にも看板をみかけるとその文字をなぞろうとしたという。いまもなぞるように文字をよみ、なぞることで書き続けているのだから変わらないのだろう。

あの椅子に座っていた小さな身体と現在の身体のあいだで有変と不変のところが明瞭にみえた瞬間だった。

2012年 12月 30日(日) 23時29分27秒
壬辰の年(閏年) 師走 三十日 乙丑の日
子の刻 一つ

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