■ 冷たい花火 2008-4-22(Mardi) 京都に行く。 京都国立博物館で河鍋暁斎展をみる(これが目的ではないが)。 その前に平常展で目慣らししておくか。 行って見ると平常展には人がまったくおらず、一人で各部屋をみてまわるような感じ。こちらには暁斎が所有していた「探幽縮図」が出ていた。暁斎の時代でもすでにかなりの高価であった探幽の作品だが、所有していたのだね(なにしろ軸を当時価格の百円で売ったりするのだから)。暁斎の財政的事情もうかがえる。 鹿王院の達筆な書状もみておくといいだろう、目所が窮屈で・・・と眼病をもっていたらしいが。 京都市の「舞踊図屏風」六曲一隻、狩野山雪の傑作といわれる「雪汀水禽図屏風」六曲一双が出ていた。山雪は永徳と入れ替わるように登場した絵師で、この作品は初見だがおもしろい。胡粉で彩られた波はウネリがすごく、自分の立っている床も揺れてしまいそう。盛り上がり具合が尋常ではない、山雪のみならず狩野工房作、といってもいいだろう、共同作業でなければ生まれないような表現だと思う。金砂子や切箔もふんだんに空に使われているのも、空気そのものが封印されているよう。ほとんど直角になっている、奇妙な角度の松、飛ぶ鳥群はエッシャーの「アナモルフォーズ」を彷彿させる。暁斎展と同時に山雪を出してくるのは、なかなか憎いことをしてくれるではないか。 雪舟の「黄初平図」もあるし、彫刻部門にある「女神坐像」という12世紀作の小さくて彩り豊かなものがあって、春を感じさせてくれるような雰囲気。 さて、暁斎展に。 混雑とはいえないものの(東博のほうが混んでる)、それでもわりと人が多い。 暁斎が手がけたうちで最大のスケールであろう、新富座の引幕はまずその大きさに圧倒されるのだが、展示方法は残念だった。というのは、あれは暖簾なのでぶらさげてあるのだが、途中で折り曲げているのだ。全体は見えるようになっているのだが、暖簾を折り曲げるなんて、ちょっとなあ。 もし僕が会場構成をするなら、あれは折り曲げないで展示することにこだわったと思う。 西洋劇の肉筆画(というか、今回の展示はすべて肉筆画)で、下絵と実作が同時に展示されているのがあって、たまたまバックが擬洋風建築でイオニア式の柱だったのだが、特徴的な羊の角みたいなものが柱頭にあるんだけど、下絵だとくるって書いてあるだけで柱のディテールがぎりぎりまでわかるようにしてあって、これはうまい略し方。 表装は全体的に黄土色と抹茶色がベースになっているものが多かったけれど、幽霊図の表装は五月雨っぽいラインがひかれてあるし、「貧乏神」は表装もつぎはぎのような感じ。「猫抱く美人図」の表装はじつに良い。冷たい花火のような青い淡い爆発のようなデザインが白地に版画であって、恩地孝四郎が喜びそうなデザインになっていた。他にもいろいろ気になる表装はあったが、とりあえずこのあたりで。 「暁斎下絵帖」は男女がセックスしているシーンで、男女とも身体が透けて骸骨になっているものがあったが、まるでX-rayのよう。最初にレントゲンが発見したのは1895年なので1884年までに描かれたこれはレントゲンより先になるわけだが。ここでクレーリーを持ち出すのはどうだろうか?なんて考えたり。 仮名垣魯文が猫々道人と名乗っていたなんて知らなかった。紹介文をみて気づいたんだが。 2008年 4月 22日(火) 23時31分05秒 晴 戊子の年(閏年) 卯月 二十二日 壬辰の日 子の刻 二つ |
■ やきたて写真 2008-4-18(Vendredi) 今更かもしれませんが、3月頭にNPOにっぽんmuseumのツアーで大乗寺に行っており、夜の拝観をさせていただいたときの写真。 http://www.daijyoji.or.jp/main/index.html 一眼レフで撮影したものをフィルムスキャナで処理しました。金箔のラインがくっきりと出ているのが遠くからもわかることと、蝋燭が下にも反射している。 いつものの美容院でカットしてもらう、これまで長らくお世話になっていた美容師さんが遠くに引っ越してしまわれたため、新しい人にお願いする。イメージを伝えてカットしてもらったが、いい感じだ。 Penを読んでてアムステルダムのところで即席の病院ができたという記事が目に止まる。 タルドの『模倣の法則』を手にする。風間八十二訳は読んだことあるが、これは初めて。ごまごまと読んだが、考古学と統計学のチャプターでグラフの曲線による視覚的イメージ・・・の下りがもっとも建築的に引用できるところではないだろうか。それにしても、建築論の世界でなぜタルドがあまり意識されていないのかちょっと疑問。 ちなみに『社会法則』という小林珍雄訳のは持ってる。京都にある古本屋で100円以下売られていたんだ・・・。 建築論をごまごまと拾い読み。 例えば、慶応のメディアセンターがバタイユのDocumentsという有名な雑誌をコンプリートしている。その中、"Dictionnaire critique"というコーナーでバタイユが空間や人をとりあげて解説しているのは見逃せない。といったようなこと。 19世紀に聾者の解剖をしまくった(100体以上!)医師がいて、その結果を報告している論文のレビューを読む。本体も手にしなければならないだろう。 2008年 4月 18日(金) 18時21分41秒 雨 戊子の年(閏年) 卯月 十八日 戊子の日 酉の刻 三つ |
■ ひさしぶりに見て歩く 2008-4-16(Mercredi) 最近は洋書、海外論文しか読まない生活。 以前、産婦人科における内診台のデザインについて簡単に書いたが、偶然にも概念的に近いものを見つけた・・・とか良いものをいくつか掘り出せているところ。 あいまをぬって絵と写真をみにいった。 ワタリウム美術館で「流しの写真家 渡辺克己」をみる。 http://www.watarium.co.jp/exhibition/0802watanabe/index.html これはおもしろい。1964年末から新宿で写真をとりはじめたらしいのだが、なかには殴られ屋の写真もあった、これはテレビにもなったので知っている人も多いと思うが、以下の本も出ている。 http://www.books-ruhe.co.jp/kako/2001/02/nagurareya.htm 中にはケンカシーンもあったりしてよくとれたなあとも思う。 国立新美術館で「モディリアーニ展」をみる。「嘆きの裸婦」と題されたシーレ的なヌードは右下にもともとあった明るそうで楽しそうな表情の裸婦が軽くぬりつぶされているのが見える。本当はもっとはっきりぬりつぶせばいいのに、手のところなんかほとんどぬりつぶしておらず、苦悶と歓喜がみえている一枚。 女性のヌード画のデッサン。面取りをしていて、彫刻的な感じがするのも、やっぱり当初彫刻家をめざしていたからなのか。Ce que je cherche, ce n'est pas・・・(略)・・・とある「私が探しているのは、・・・ではなく」という走り書きのメモも。これは売店のトートにもプリントされていた。 解説を読んでいたり、カタログに目をとおしていたら、Fernand Legrosの名前があった。いうまでもなく、贋作を売りさばいた有名な画商だがモディリアーニの娘をだまして真作であるという証明書を書かせていたというよくしられた紹介文。 彫刻を断念した1914年あたりから1915年にかけてはモディリアーニ独特の撫で肩や黒に近い赤の大きな斑点で調節された背景、片目だったり両眼だったりぬりつぶされた眼がでてくる。いや、ぬりつぶされた、という言い方は正確ではないだろうけど。 「黒いドレスの女」なんかは髪型に版画のように絵具の上から溝をいれていて、よりくっきりとしたストレート感が出ているが、これはカタログからはわからないところ。 「マリーローランサンの肖像」は美しく、気強そうで自信ありげな女性。 ジャンヌ・エビュテルヌの肖像がいくつか出ていたが、顔の傾きと背景のラインが平行になっておらず見るものをひきつけるね、あれはなんだろう。 ギャラリー間で杉本貴志展をみる。 http://www.toto.co.jp/gallerma/ex080405/index.htm 水の茶室はうわさにきいていたが、目が落ち着かないね・・・。無意識に動いてしまって、ただ受け身になってしまうかのよう。でも杉本先生のコメントにある、内と外の曖昧な関係やきっちりしきってしまわない、ということは同感できる。 この展覧会にタイトルをつけるとするなら「孔」かもしれない。 六本木ヒルズのigoogleカフェでgoogle検索のコツ、といったパンフレットをもらう。といっても、2年位まえに特集された雑誌の付録みたいだが。 東京国立博物館で袁耀や細谷立斎、王楚珍をみる。 2008年 4月 16日(水) 23時03分42秒 晴 戊子の年(閏年) 卯月 十六日 丙戌の日 子の刻 一つ |
■ 地図帳を新しくする 2008-4-14(Lundi) 食品を買い物するとき、デパ地下とかスーパーでするのだけどクイーンズ伊勢丹が出来てからはそこで買うことも多くなった。スーパーってデパートよりも安いという時代は終わったらしく、ものによってはスーパーより安かったりする。 高島屋のデパ地下は夕方になるとセールが始まって、スーパーと同じか安かったりするので、場合によってはデパ地下で買うことも・・・。そんな買い物といえば最近、地図帳を新調した。帝国書院の『新詳高等地図』だ。 http://www.teikokushoin.co.jp/textbook/high/index01.html というもので、地図帳というと有名なものだと昭文社『日本大地図帳』『世界地図帳』、平凡社『アトラス日本地図帳』があったりするけど、帝国書院のはなによりコンパクトなのがいい。さすが高校で教科書として使われているだけあって、1ページ1ページにスキが全くない。すみからすみまできちんと抑えている。二宮書店の地図帳もよく使われるんだけど、帝国書院のほうがつくりが丁寧。 もちろんスケールの細かさは旺文社や平凡社アトラスに叶わないけど、必要最低限おさえられている点が評価できる。世界・日本地図両方がこのコンパクトサイズにおさめられていることにびっくりするが、特産品や生産品、交通的な意味では航路や道路、地名も読み方が難しいもの(四条畷とか)には振り仮名があるし、美作とか廃藩置県以前の地名もしっかり載っていて、これと松岡正剛『情報の歴史』や吉川弘文館『日本史年表・地図』『世界史年表・地図』をあわせて置いておけば限りなく世界が広がるだろう。 木下長宏先生が夏から岡倉覚三『日本美術史』の精読的な講義をはじめるらしい。それも10回組らしい、美術史上、欠かせない本をどのように調理してくれるのか、という点がたのしみ。地図帳とあわせて読めば大いに思索を刺激してくれるだろう。 2008年 4月 14日(月) 12時26分56秒 雨後晴 戊子の年(閏年) 卯月 十四日 甲申の日 午の刻 三つ |
■ 4月最初の週末で 2008-4-7(Lundi) いつものの古書展へ。欲しいものはなかった。黒岩比佐子さんのブログではたいそうなレア本ばかり紹介されていてうらやましいけど。 「叛」2号という建築家'70行動委員会の雑誌があったので立ち読み。これは http://www.artgene.net/dictionary/cat64/post_226.html にあるように万博反対の記事を掲載しているほか、黒川さんと一緒に行動したメタボリズムの建築家大高正人建築設計事務所における労働環境を告発する記事があった。 障害者を障がい者と書くことについては、何の意味もないと思っているが、小谷野さんのサイトで取り上げられた。 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20080403 「基盤地図情報」のインターネットによる提供が開始された。 http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2008/0326.html 川崎市で試してみたが、むろん建築設計の現場に導入されるだろう、すぐに。 「新建築」4月号で磯崎新さん久々のインタビュー。インタビュアーは太田佳代子さん。磯崎さんの写真をみると、なにか近未来的なサングラスをしているのだが、眼の手術をした直後なのだそう。眼の病気なのか、それともレーシックをしたのか。 レーシックといえば、スポーツ選手がよくしているのを記事でみる。最近のだと鳥谷選手か。 http://www.sponichi.co.jp/osaka/base/200804/03/base209314.html インタビューはジャスパー・ジョーンズや千利休をとりあげつつ価値観について語るあたりがおもしろい。 唄さんのブログで教わったが、L'Officiel de la Modeのアーカイヴがあるのを知る。なにか服のラインがだんだん一定しなくなっている第一印象。 http://patrimoine.jalougallery.com/lofficiel-de-la-mode-sommairepatrimoine-13.html ロスで活動しているらしい、Jesse Kammというデザイナーのサイト。 http://www.jessekamm.com/ 真ん中の大きいリボンのワンピがとくにかわいいとおもった。 http://www.notcot.com/archives/2008/03/jesse_kamm_desi.php 日本でも販売しているみたいだけど。 少し前に終わったが、「夢の美術館 世界の名建築100選」 http://www.nhk.or.jp/yumebi/ 以下一覧。まだ見ていないものでぜひ見たいのは、41、50、51、52番か。いずれも交通のアクセスが悪そうなところにありそうだ。 敦煌莫高窟がセレクトされていないのは残念だけど。 001 桂離宮 / 京都府 002 タージ・マハル / インド 003 モン・サン・ミシェル / フランス 004 故宮 / 中国 005 ケルン大聖堂 / ドイツ 006 カッパドキアの地下都市 / トルコ 007 法隆寺西院伽藍 / 奈良県 008 厳島神社 / 広島県 009 クフ王のピラミッド / エジプト 010 清水寺 /京都府 011 パンテオン / イタリア 012 アヤソフィア / トルコ 013 承啓楼 / 中国 014 ウェストミンスター宮殿 / イギリス 015 サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂 /イタリア 016 ピサの斜塔 / イタリア 017 エッフェル塔 / フランス 018 コロッセオ / イタリア 019 ペトラのエル・ハズネ / ヨルダン 020 シェーンブルン宮殿 / オーストリア 021 シュバルの理想宮 / フランス 022 アルベロベッロのトゥルッリ/ イタリア 023 アメン大神殿 / エジプト 024 パルテノン神殿 / ギリシャ 025 マチュピチュ / ペルー 026 エル・カスティーリョ / メキシコ 027 マハーボーディ寺院 / インド 028 シュエージーゴン・パゴダ / ミャンマー 029 ワット・アルン / タイ 030 ボロブドゥール寺院 / インドネシア 031 薬師寺東塔 / 奈良県 032 会津さざえ堂 / 福島県 033 三佛寺投入堂 / 鳥取県 034 浄土寺浄土堂 / 兵庫県 035 平等院鳳凰堂 / 京都府 036 エローラ石窟寺院 / インド 037 メスキータ / スペイン 038 バイヨン寺院 / カンボジア 039 スルタン・アフメット・モスク / トルコ 040 イマーム・モスク / イラン 041 泥のモスク / マリ 042 サンマルコ聖堂 / イタリア 043 サント・マドレーヌ聖堂 / フランス 044 アミアン大聖堂 / フランス 045 サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ聖堂 / イタリア 046 シャルトル大聖堂 / フランス 047 サン・ミシェル・デュギュイ礼拝堂 / フランス 048 ル・トロネ修道院 / フランス 049 ロンシャン礼拝堂 / フランス 050 ラリベラの岩窟教会群 / エチオピア 051 モルドバ地方の教会群 / ルーマニア 052 リラ修道院 / ブルガリア 053 ボルグンド教会 / ノルウェー 054 森の墓地 /スウェーデン 055 日光東照宮 / 栃木県 056 天壇 / 中国 057 万里の長城 / 中国 058 ローマ帝国の水道橋 / スペイン(フランス) 059 ヴェルサイユ宮殿 / フランス 060 アルハンブラ宮殿 / スペイン 061 二条城二の丸御殿 / 京都府 062 ノイシュヴァンシュタイン城 / ドイツ 063 松本城 / 長野県 064 姫路城 / 兵庫県 065 聖ワシリー聖堂 / ロシア 066 エルミタージュ / ロシア 067 メーリニコフ自邸 / ロシア 068 モスクワ大学 / ロシア 069 シバームの高層住宅 / イエメン 070 伊勢神宮 / 三重県 071 慈照寺東求堂 /京都府 072 西本願寺書院 / 京都府 073 三溪園臨春閣 / 神奈川県 074 妙喜庵 待庵 / 京都府 075 孤篷庵 忘筌 / 京都府 076 鹿苑寺 金閣 / 京都府 077 臥龍山荘 / 愛媛県 078 東大寺南大門 / 奈良県 079 正福寺地蔵堂 /東京都 080 根来寺大塔 / 和歌山県 081 羽黒山三神合祭殿 / 山形県 082 大瀧神社 / 福井県 083 閑谷学校 / 岡山県 084 ビョンサン(屏山)書院 / 韓国 085 代々木体育館 / 東京都 086 ハフェ(河回)村の民家 /韓国 087 ラブルーストの閲覧室 / フランス 088 ムニエのチョコレート工場 / フランス 089 ウィーン郵便貯金局 / オーストリア 090 富岡製糸場 / 群馬県 091 オルタ邸 / ベルギー 092 ヒルハウス / イギリス 093 シュレーダー邸 / オランダ 094 サヴォア邸 / フランス 095 ファンズワース邸 / アメリカ 096 落水荘 / アメリカ 097 クライスラービル / アメリカ 098 サグラダ・ファミリア / スペイン 099 岩のドーム / 旧エルサレム市街地 100 白川郷合掌造り / 岐阜県 2008年 4月 07日(月) 14時59分19秒 曇 戊子の年(閏年) 卯月 七日 丁丑の日 未の刻 四つ |
■ 春の日々 2008-4-4(Vendredi) 横浜の桜は早くも葉桜になりかけている。 体調はまあまあだが咳がひどい。 実家から蕎麦のつゆが送られてくる。親が作ってくれるつゆで大晦日に食べるんだけど、このアゴダシが最高なんだよな。 日本手話学会から依頼されていた原稿が掲載されたと報告をもらう。 http://www.jasl.jp/ja/371/ に短いけど掲載されています。でも一部文字化けがあるっぽいね。竹内先生はフランス語学習で利用した参考書『シェーマ式フランス語文法』を書かれた竹内信夫先生のことで、お世話になった先生でもあるわけだ。初対面で少しお話をきかさせていただいた。 フランスといえば、最近ポワチエの聾協会がflickrでこれまで溜めていた写真を一挙にアップしていた。 http://www.flickr.com/photos/sourdspoitiers/ MSSAは盲ろう者のあつまり、ASAEPLは聾のおじいちゃんおばあちゃんたちのクラス会、SLSPはスポーツ関係、いずれもポワチエ周辺地方の写真だろう。聾者たちの集まりってしばらくご無沙汰なのだが、日本でもこれだけ写真を見せますよ、というサイトはなかったと思う。 古本屋で下條伸輔『サブリミナル・マインド』とベラ・バラーシュ『視覚的人間』(ハードカバー)をみかけて購入する。これらは読んでいつか欲しいと思っていた本。そういえば、最近欲しいなと思った本が、論文関係で読んだ伊木壽一『日本古文書学 第三版』。手紙の折り方、サインをするとき筆の部分や爪でするあたりなどの紹介がおもしろい、系統的によくまとまっている本。美術史でも書はむろん、日本画の賛について勉強するには欠かせない本じゃないかと思う、実物が欲しくなって検索かけてみたら、結構良い値段で売られているようだ。また買うだろう。 この犬かわいいが、ちょっと怖い。 2008年 4月 04日(金) 22時02分30秒 晴 戊子の年(閏年) 卯月 四日 甲戌の日 亥の刻 三つ |
■ 京都国立博物館でひととき。 2008-4-2(Mercredi) 体調を崩してしまいました。 具体的には扁桃腺がよくない。2006年の秋にこれで入院しているので油断ならないのだけど。しかし予定もいろいろあるし、出来る範囲でこなさなければなるまい。まだ咽喉の調子はよくないが・・・。 京都国立博物館の噴水前で休憩する。 京都で評判のパン屋で買ったものをおやつにして、ベンチに座って噴水をみながらあれこれ考える。 平常展示でみたもの。 仏画 「八坂塔絵図」(法観寺)室町時代 紙本着色 「成相寺古伽藍図」(成相寺) 「施福寺参詣曼荼羅図」(施福寺)桃山時代 「当麻寺供養図」 籐吉・籐三筆(西寿寺)江戸時代 と寺院の伽藍がよくわかるようなものが出ていた。「八坂塔絵図」は祇園の八坂神社が左にあり、手前に四条橋、五条橋、中心に八坂法観塔(法観寺五重塔)があって、まあ要するに西から東への鳥瞰図になっている。この五重塔は1440年再建。 「成相寺古伽藍図」は波の表現に着目したい。浜松図そのものの二重線で描かれた波になっている点。 「当麻寺供養図」はちょっとびっくりするのは寺院の屋根なんだけど、明るめのグリーンに仕上げられていて、背景にある山のそれとマッチングしているかのよう。屋根と山が同系色のため、建造物が山々にみえてくる。そのなかを釈迦が訪問するというストーリー性豊かな構図。おもしろい。 水墨画 「麝香猫花鳥図」 長吉筆 素性不明の画家。 猫が原っぱに座っているポーズがほぼ正面になっていてこのアングルは珍しいとおもう。鳥が口をあけているため、甲高い声が軸からしてきそうである。 絵巻 「滝口縁起」(清凉寺) これは有名だが見るのははじめて。この絵巻を分析した論文が、梅津次郎による「国華」718号に掲載されたものだろう。 平家物語のなかにもあるが、悲恋物。ただ、この絵巻では女の父が大蛇という設定になっているのが相違点か。 近世絵画 「三岳紀行図屏風」八曲一双 江戸 池大雅、韓天寿、高芙蓉の当時すでに有名だった画家三人が白山、立山、富士山に登山したときの記録や絵を屏風に仕上げているもの。今風の言葉でいえば、ブログみたいなもので、何月何日どこにいる、どこを通ったというとりとめのない報告形式。 中国絵画 「草虫図」呂敬甫 15世紀 一軸 これが一番の収穫で、草花がかわいらしいのだが、表装がめちゃくちゃ良い。中縁を白地に藍の花か鳥のような抽象的な模様に、天と地に藍地にグレーっぽい感じで花をあしらっているんだけど、花がくっきりみえてくるし、涼しさもあって。 「牡丹図」不詳 元代 二軸 絹だったかな。 説明によれば、京都の高桐院(こうとういん)に伝わるもの、14世紀と推定。地面は墨、牡丹と鳥は色絵が厚塗りされており、技量の高い作家性が伺える。 「草虫図」不詳 明代 一軸 絹本着色 「菊図襖」桑山玉洲 桑山は評論でも知られた画家。葉脈、葉のプロポーション。 雛祭りコーナーで犬張子をみたが、これは東京国立博物館とほとんど同じようなタイプじゃないかな、顔は人面犬のようだ。 竹田人形のミエは、首のねじれ具合が一瞬を表現しているよう。すぐレッシング『ラオコオン』を思い出してしばらく見とれる。 博物館の桜はすでに咲いていた。 愛宕念仏寺近くにある「博物館さがの人形の家」のお雛様。 19世紀の人形とのことだけど、ボールみたいな感じでなにかファンタジックでもあるし、怖くもある。夜中にポーンポーンって飛び跳ねたりしてね。 2008年 4月 02日(水) 17時28分26秒 晴 戊子の年(閏年) 卯月 二日 壬申の日 酉の刻 一つ |
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