■ ライブラリー・ラビリンス II 2009-9-29(Mardi) またもや本たちの迷宮に迷い込んでいる。 何か知りたいことがあって、足がかりになるような本が見つかったり、そうでもなかったり。 京都での調査のついでに奈良の大和文華館へ。これで閉館ということで最後になってしまった、見納め。閉館記念なのか、絵葉書を無料で提供していた。もちろん全種類一枚ずついただく。郵便番号が五桁なので、昔作った葉書なんだね。 そういえば、少し前に矢代幸雄の旧蔵資料もみる。ワイン好きなのかお酒の本まで丁寧にコレクションしてあった。興味深いのはやっぱり矢代が若いとき、原三渓のお世話になったときの資料とか、田中一松から送られた本。 東洋民俗博物館にも行く。建築の意匠も凝っているディテールがあって、注意していきたいところ。 ちなみに、ここは聾に関する展示として、耳がなおるようにジャラジャラと音がしそうなもの − 木とかをネックレスみたいにして、奉納しているというものが興味深い。 とりわけ、矢代幸雄と九十九豊勝が同じ駅のところに生きていたということ事体が面白い出来事のようにも思える。 2009年 9月 29日(火) 21時59分09秒 己丑の年 長月 二十九日 丁丑の日 亥の刻 二つ |
■ 夢で矢代幸雄に会う 2009-9-20(Dimanche) 少し秋らしくなってきた。天気も落ち着いている。 美術史の矢代幸雄さんのことを考えながら寝たら、矢代幸雄の夢をみた。 なにか美術館のようなところで掛軸が並べられてあって、僕と矢代が一緒に絵をみていて、そのうちの一軸が有職故実をテーマにしたような道具を規則正しく並べている掛軸。それに惹かれて「先生、これちょっと見たいのですが」と言ったら先生は「あまり顔を近づけないように。」と鍵をあけて、ガラス戸をあけてくれた。ケースのなかに入ってそれを矢代と一緒に見ているだけの夢だったが、夢とはいえ僕がつくりあげた矢代のイメージを忘れられないだろう。 矢代幸雄は僕が生まれる前になくなっているので会っているはずはないのだが。 誕生日パーティのお誘いがあり、場所をよく確認せずに「行きます」と返事したら「おい!ナント(フランスの西部にある都市)まで来てくれるのかよ?」とつっこまれた。地理感覚が薄れている。 2009年 9月 20日(日) 13時46分01秒 己丑の年 長月 二十日 戊辰の日 未の刻 二つ |
■ 絵と絵とあいだで 2009-9-10(Jeudi) 九月になりました。 『蒙古襲来絵詞と竹崎季長の研究』 (錦正社史学叢書)という緻密な研究を読んだ。著者の佐藤鉄太郎はこの本の最後で、「三の丸尚蔵館学芸員の太田彩さん(旧姓 松本)が、わたしの研究を日本の美術(414号)、三の丸尚蔵館年報・紀要で剽窃している」と批判していた。具体的な例がある、としていたが、それがなんなのか明示していなかったが、もしそうならば研究以前の問題だ。 引用するとき出典をどこまで示すかというのはややこしい問題で、さらっとこの本にある、という書き方もあるし、頁数まできちんと言及するのだってある。後者のほうがいいけれど、コールハースはそこまでソースを明示して書いていなかったり、そこは決定されたルールがあるわけでもない。ただ、論文の場合は、きちんと注釈の形で示すのが普通だと思うが、佐藤さんによる太田さんの批判では、佐藤さんが太田さんに論文を差し上げたのに、断りもなく一方的に盗用したという。他人とのあいだで、ここからここまでだときちんとスジをとおさなきゃ。 刊行以前の論文をもらったりしたら、それを誰かにもらったということも含めて、内容を言うなんて絶対いけない。 ここ最近、いくつか展覧会をみる。もう終わったものが多いけど。 まず、国立西洋美術館。 「ル・コルビュジエと国立西洋美術館」 「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」 コルビュジェ財団からの図面をよくみると、湿度・温度の空調装置は設計しないという契約。つまり日本に任せるということだ。 コルビュジェの図面では色のイメージが具体的。 同時に開催されていた、版画展は、ベーハムという人が彫ったキリストの表情、ムンクの黒い力が出ているリトグラフ、クロード・ロランのどろくさい感じ、ドーミエ、戦争の惨禍シリーズをみていく。ベーハムのがとりわけよい。 ピラネージのは、紙のサイズが飛び抜けてというほどじゃないけれど、大きい。だから顔を近づけるとその空間に包まれるみたいで面白い。図版では体験できないあたり。 「百鬼夜行の世界」(国文学研究資料館 国立歴史民俗博物館) http://www.nijl.ac.jp/~koen/tenji09-2.htm http://www.rekihaku.ac.jp/events/p090718.html これは見たいと思いつつも、立川と佐倉(千葉)という東京都内をはさんで移動しなければいけないのが億劫でなかなか腰が立たなかったけれど見に行った。立川のは五月に新しくできた建物で立川とは思えない緑のなかに建てられていた。国文学研究資料館の向かいは極地研究所だった。ペンギンや南極の模型が展示されている。これもゆっくりみたかったけど。電車のなかで読書したりいろいろできるのはいい。ちょっとした小旅行だ。女の子と二人で見に行くのが理想のコースなんだろうけどね。国立歴史民俗博物館は常設展示でいろんなジオラマが丁寧に作られてあっておもしろい。 「四つの物語」(川村記念美術館) http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html 佐倉にいったついでに見たが、これはよかった。 なにより、建築と外の雰囲気がピターっと付随しあっているような美術館。増築されている。 ジョセフ・コーネルが好きらしく、コーネルのための部屋があった。スタッフにきくと、年に三回は展示替えしているとのこと。 南蛮屏風(六曲一隻)をみる、これははじめて見るヴァージョンかな。イエズス会の人たちがかなり長身。 最近、よく名前をきく高島野十郎が出ているのも見逃せないけど、やはり岸田劉生の麗子像のうち紫のセーターをきているヴァージョンがとても愛着感をだしている。麗子というと、不気味なのもあったけれど、この麗子は違う。ただ、おもしろいことに後年に補筆していると岸田自身のサインがあること。どこを補筆したか、それが問題なのだけどわからなかった。絵を見る目が無いとしか言いようが無い。 「道教展」(三井記念美術館) 最終週ぎりぎりにみていく。よくみれば、「百鬼夜行の世界」とリンクしている。リンクの素材は安倍晴明だ。 「「写楽 幻の肉筆画」 ギリシャに眠る日本美術〜マノスコレクションより」(江戸東京博物館) http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2009/0704/200907.html おもしろかった。浮世絵って、摺り方やヴァージョンがあるので、写本研究のように一覧表のようにできたらおもしろいかもしれない。石川豊信の小太りの人物、鳥居清忠の春信的なポーズ、佐川近信のペンのような細いライン、春重(司馬江漢)の遠近法を確認できたのはよかった。一筆斎文調の役者絵は線が細くて、コミックのよう。 春章による夜の表現について。遊郭の外からの構図なんだけど、摺るときに遊郭のなかの明るい色と暗い外の色のあいだに、朱色の窓の格子があるんだけど、その外側に朱の上に黒をうっすらといれて、暗さと明るさをよりリアルにみせている。 歌麿。有名だね、たとえば櫛を髪の真正面からさすことで、立体感を出している。櫛って頭の上からさすイメージがあるけれど。 柱絵というけれど、縦に細長い浮世絵は、明治期の新聞にも使われる構図だろう。浮世絵と明治期新聞の挿絵との関係というのも近代浮世絵のなかで、注目して良いテーマかもしれない。 ここ最近は、天気も比較的落ち着いている。 2009年 9月 10日(木) 12時19分32秒 己丑の年 長月 十日 戊午の日 午の刻 三つ |
|