tomotake kinoshita old journals

 

2010-01 journals

鎌倉から渋谷
2010-1-23(Samedi)
ちょっと論文に集中していました。
親しい知人にもメールを全く出しておらず、心配かけているかもしれない。返事しなければ・・・。

展覧会とかお出かけすることもすっかり、ご無沙汰だったのだけれど、終わりが近づいている内藤礼展と村山槐多展をみなければということで出かける。

内藤礼展 神奈川県立近代美術館鎌倉館にて。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2009/naito/index.html
このサイトの写真、ガラスのなかに人がいるが、これは外ではなくて展示室の中。
その一番最初の展示室なんだけど、発光ダイオードのようなちっちゃなランプだけで照らされている部屋。ランプの下にはお菓子を包むような可憐な花がプリントされたツルツルした紙がA4ぐらいの大きさに敷かれている。だからなのか、そのランプが微妙に花畑をそっと照らしているようにみえるかもしれない。
ガラスの内側に入って、そこから外をみるというのがうまい。ふつう、わたしたちは展示室に入って、ガラスの外側から展示されたものをみるのだが、そうではなく、外側から内側に入るという経験をする。靴をぬいであがると、そこからふっとみえる風景はガラスが並んでいて、まるで夜の街のよう。西沢立衛の森山邸を思わせるところもあったけれど、ああ、そうだよね。あの建築のうねったような道路が拡張した感触。
視点が高くなるので、見下ろすような感じになるが、あえて上を意識させるように風船や小さなビーズがあったり、下には液体をたっぷりふくんだ瓶があって、自分の意識がそこに散らばるようで歩みもゆっくりする。
それで展示室に戻ると、その空間が嘘のように消えている。ここで展示されるものと展示するものが反転してしまっている・・・。
気付かなかったけれど、坂倉設計のこの建築ははめ殺しのガラスと引き戸のガラスがあるんだね。はめ殺しのは床に対して垂直ではなくて、少し手前に傾いている。


次の展示室は、さきほどの「お菓子を包むような可憐な花がプリントされたツルツルした紙」を敷き詰めた部屋で、海岸から波がやってくるかのようなイメージか。じっとみていると、わたしの立っている地点から花畑を浸食しようとしている風景ともみえる。

壁に貝殻の裏側を使ったボタンをふたつはめているのもあった。

ちいさなビーズを上から一本の線のように吊るして、ふわふわ揺れているところ。その背景に岩壁があって、岩壁に意識を集中させるとビーズが消えていく・・・。それで軽く首をふると、ビーズがわたしの視覚に反応してくる。

そこはかとないものをアドベンチャーのようにわたしたちが探し出し、冒険するようなそんな展覧会だったとおもう。これが成せるのも坂倉準三の室内、この中庭と野外展示を可能にする − 調節できる環境とできない環境というプランだったからというべきだろうか。

さて、村山槐多展 松濤美術館にて。
ひさしぶりの渋谷。喧騒を潜って浮気もせず(これはちょっとカフェに寄るとか、食べるとかの意味ね)一直線。

この建築はいうまでもなく白井晟一の設計であるが、東急本店方面から歩いていくと新しく駐車場になったところがあって、そこから美術館の裏側が見える!これは今までなかった視角。思わずそこからじっとみる。横にぐわっと広がっているのは正面と似ているけれど、

村山を語るときに取り上げられるキーワードして、「ガランス(garance)」という茜色、深紅色のことがある。これを一堂にみていると、だんだん血糊に見えてきてしょうがない。夕焼けの光をあびる人物の顔が血に染まっていく・・・そんな怪奇の一歩手前のぎりぎりを綱渡ろうとしているような画家。もうひとつのキーワードはたぶん藍ではないか。藍を薄めたようなそんな色も多用する画家のようにもおもえる。人の顔を藍メーンでしあげてガランスをいれることで、よりガランスの効果を引き出すかのよう。

詩を読めば、あの『ドン・ファン』に言及している。とにかく女ったらしの好事家。モリエールのそれは最後に火に焼かれて地獄におちていくが、意識していたのだろうな。遺書に「地獄へ行く」というようなことが書いてあるし、お玉さんという昼はモデル、夜は浅草で女給をしていた女に熱をあげてしまい、仕事が終わるのをまって家まで送り届けるというあたり。

「放尿する僧」は両手を合わせながら放尿する僧の画。はじめて拝見した。村山が中禅寺の宿屋に泊まったとき、便所で「便所より中禅寺湖をながめけり」という落書(原文では楽書)を発見したことを書いていることとシンクロしているのかな。

スケッチのなかには線を走らせるものがあって、線で世界を統制している・・・。

ひとつ目に留まったものがあった。図版でもラストの作品として飾られているが、『村山槐多遺作展覧会目録』(1919)の図版番号3の「乞食と女」だ。



これはいい絵。いま、所在不明とのことで図版のみでの紹介となっているが、やけに白い肌で手だけでなく足の指先まで白い。そして色っぽい、藍色の水玉模様の着物の女が男に何かを渡している様子だ。がっしりした女。奥には座り込んでいる男性の姿がみえ、女の頭が遠近法の消失点になっている。
実物をみないことにはなにもいえないが − 男をみつめる女と女をみようとしない男。この視線のすれちがいに物語を作ってみたくなる。

三重県立美術館は村山槐多の作品をたくさん所蔵しているが、以下のサイトが充実している。
http://www.pref.mie.jp/BIJUTSU/HP/study/artist-index/kaita-index.htm


2010年 1月 23日(土) 19時15分49秒
庚寅の年 睦月 二十三日 癸酉の日
戌の刻 一つ

エンジェル・ビル
2010-1-11(Lundi)
年末年始にかけてライオン・ビル、キングコング・ビルを紹介してきたが、今回は最後となるエンジェル・ビルを紹介しよう。個人的にはこれが一番いい出来だと思っている。エンジェルというにはやや大人びている印象があるのだけど、羽根があるのでエンジェルということにしておこう。
まず、写真をみていただこう。


近景1



近景2



遠景



地上から天使を見上げる。



天使をみる。変に手をあげている格好なのは、下からの見え方を意識しているからか。TOKYO GINZAがみえるだろうか。



ファサード、柱のデザイン。カオスである。



ファサード、柱のデザイン。奥にあるのは階段の奥にはバーやラウンジ、クラブがある。



地上を見下ろす。



ビルのなかから天井を見上げる。この照明は故障しているとのこと。



壁のデザイン。ドラゴンにライオン、東洋と西洋が混じる。



階段から外を見る。



店鋪。ワンフロアに2〜6店鋪。



おまけ。近くにはヴィーナス・ビルもありました。飲み街にこういうような彫刻を配置するという感覚をなんて呼べば良いか、そんなことを考える。


2010年 1月 11日(月) 12時28分05秒
庚寅の年 睦月 十一日 辛酉の日
午の刻 三つ

キングコング・ビル
2010-1-4(Lundi)
前回、ライオン・ビルと呼んでいる建築を紹介したけれど、今度はキングコング・ビルと呼んでいるものの写真を紹介。



いかにも新古典主義のような門構え、細長いタイルを壁、床に配置したビルをみると、何かがビルにいる。



近づいてみると、どうも猿のようなイメージ。



バーやスナックが入っているのだが、昼間は当然ながら閉まっている。





想像以上にしっかり造り込まれている感じ。身体はビルの壁に固定されている。このフロアにはじめて来た人はぎょっとするに違いない。
このビルは「キングコング」(1933)のあまりにも有名な、コングが窓をのぞきこむシーンからインスピレーションを得ているのではないか。この映画は決して単なるアクションや特撮映画ではなくて、悲劇ということに注意しておきたいところ。





たばこ屋とキングコング。

今年の目標
2010-1-3(Dimanche)
どれも重要であって、優先順位順ではないけれど。

・ピンボールうまくなること!
京都、横浜、東京でピンボール修行中の身。しっかりショット撃てるように、とくにフリッパー際に来た球のコントロールを丁寧に、正確にできることを第一にしたい。

・もっと美術作品をみること!
去年は東京国立博物館にあまり行けなかった。今年は定期的にちゃんと足を運ぼう・・・。

・料理もっとうまくなること!
母がコチュジャンを手作りできるようになっていて料理の腕をあげていることに驚いた。もっとしっかり料理できるようになろう。

・もっと本を読むこと!(とくに理論書)
普段、本は手放せないものなのだが、去年は比較的読書量が少なかったとおもう。1週間に2、3冊のペースだった。
何かについて論じられた理論書の読み込みをとくに。

・プライベートを充実させること!
相手との会話をきっちりしていきたい気持ちという意味だ。去年、疎かにしている気持ちはないんだけど、研究で常にカリカリするのではなくて、いい感じでおしゃべりしたり、笑ったりして、時には真剣な議論になるかもしれないけれど、基本的にいろんなものをみたりしてくつろぎたい。変なたとえかもしれないが、蝋燭の火を手で消すとき、手に力を入れて消そうとするとうまくいかないが、手首の力をふっとぬくと空気が出て、火がうまく消える。そんな感じがいいとおもう。

こうしてみると、とくに目新しい目標ではないね。


2010年 1月 03日(日) 21時34分06秒
庚寅の年 睦月 三日 癸丑の日
亥の刻 二つ

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