母の友人に、原爆ドームとなった建物に勤めていた人がいました。毎日出勤していて、たまたま8月6日の朝だけ所用で出勤しなかったために生き残ったと言っていました。彼女の同僚はそのほとんどが、文字通り消えてしまったそうです。ある知人の父親には、右耳がありませんでした。その朝、いつものように早めに出勤した彼は、同僚と並んで座っていたそうです。一瞬の閃光であたりは真っ白になり、気がついた瞬間には倒れた壁の間にいたそうです。座っていた場所の後ろに窓があり、そこから差し込んだ熱線で彼の右耳は失われましたが、それ以外は陰になっていたので助かったのです。しかし、隣に座っていた同僚は影も形も残っていなかったそうです。
引用元: 池上英洋の第弐研究室:再掲: 広島に生まれて。8月6日.
原爆によって耳を失うということ。熱線によって消え去る身体が恐ろしい。こんな恐ろしいことは二度とあってはいけない。
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