このトークイベント「断片の星図 ー スクラップ・ブックへの航路」は、スクラップ・ブックをもとにリサーチを行い、作品制作を行う飯山由貴さんの個展「湯気 けむり 恩賜」(実家 JIKKA、末広町)に関連して9月14日(土)に開催されるものです。

トークを通じて言いたいことに、スクラップブックの特質のひとつに「リキッド(Liquid)」があるのではないか、ということが挙げられます。

   liquid : 液体, 流体, 流音, 流音字, 液状の; 流動体の, 流動性の, 動きやすい, 不安定な (unstable),
   融通のきく, 透明な, 澄んだ; 〈目が〉涙ぐんだ; 〈音·詩など〉流麗な, 澄んで流れるような; 【音】 流音の・・・

わたしが子どものときに亡くなった祖母の初盆、仏壇の前に回り灯籠の準備がされていました。これは枠が内外の二重になっていて、内枠に花の模様が切り抜かれ、外枠には布が貼ってありました。灯籠の中心に燭台があって、蝋燭をともすと、外枠に切り抜かれた模様が投影され、熱の対流でのろく、ふわふわと回りはじめたのでした。このように花が動くということ自体、花を主人公にした想像上の物語に連れてゆかれる出来事でした。
あれから時は過ぎ去り、ある調査で突然スクラップ・ブックと出会い、何気なくめくっていると、みずからの手の動きによって断片たちが走りはじめ、わたしをどこかに連れていってくれるような感覚に襲われたことがありました。それは、かつてお盆のときに目にした古い回り灯籠の記憶だったのです。このように、スクラップ・ブックを動かすことによってイメージが衝突し合い、あるいは融合し合う ― リキッドな特質があるように思われました。この個展のタイトルは「湯気 けむり 恩賜」ですが、リキッドな「湯気」「けむり」という言葉が使われていることは、ほとんど忘れかけていた回り灯籠にまつわる記憶と無縁ではないのでしょう(「恩賜」もまた天皇から下賜を受ける対象は常に変化します)。

ここではそんなスクラップ・ブックのために、さまざまな素材が召喚されます。たとえば、ギリシア時代の記憶術、ルネサンス期に活躍した画家たちの素描コレクションとそれが抱える問題、ある政治家の聖書、サルトルの小説、昭和のドラマにおけるスクラップ・ブック、現代における愛情表現の手段・・・などなどがそれにあたります。これらを通じて、スクラップ・ブックの特性と問題を抽出していきたいと思っています。

トークのあとは、飯山由貴さんが収集してこられたスクラップ・ブックについて飯山さんのコメントを聞きながら応答していく予定です。

このイベントにおいて、わたしは手話で話をいたしますが、手話通訳が在席します(日本語音声がつきます)。

案内は以下のようになります、どうぞよろしくお願い致します。

「断片の星図 ― スクラップ・ブックへの航路」
日時:9月14日(土) 19:00~
場所:ギャラリー実家 Jikka 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-6-14 深野ビル1階
アクセス:東京メトロ銀座線末広町駅3番出口より徒歩2分、千代田線湯島駅より徒歩5分、JR秋葉原駅より徒歩7分
参加費: 1000円(1ドリンク付き)
トークイベントの予約はy.iiyama2▲gmail.com までよろしくお願いします(▲を@にしてください)。


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