目撃すべきユクスキュル

國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』で引用されているように、ここ数年、ヤーコプ・フォン・ユクスキュルの本がよく引用されるようになっている風潮があるように感じている。『動物の環境と内的世界』が出たし、『生命の劇場』も文庫で出た。とりわけ、翻訳されている『生物から見た世界』 岩波文庫(青943-1)(あるいは思索社、 1973年)が一番読まれているはずだ。

そのなかでユクスキュルはこう書いている。「これからわれわれが研究しようとしている生物の環境世界(Umwelt)は、その周囲に広がって見える環境(Umgebung)の単なる一片に過ぎない。そしてこの環境というものは、われわれ自身の、つまり人間の環境世界に他ならないのである。」だと。
それで、見て欲しいものがあるのだけど、原書”Streifzüge durch die Umwelten von Tieren und Menschen: Ein Bilderbuch unsichtbarer Welten.” (Sammlung: Verständliche Wissenschaft, Bd. 21.) Berlin: J. Springer (mit Kriszat G.).の表紙が重要。蛾や鳥、虫を丸い円で囲んであるけれども、ユクスキュルが環境世界はシャボン玉のようなものであると書いていることを思えば、これはユクスキュルのいう環世界(環境世界)の概念 — ユクスキュルの思想を端的に示している。

わたしたちがユクスキュルを手にとるとき、まずこの表紙を目撃しなければならないと考えている。


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