古本への処女航海

わたしが初めて行った古本屋「檸檬」。はじめて行ったのは小学校の6年生ぐらいではなかっただろうか。商店街のなかにあって、通路の左右に店舗があったのだけど、左は倉庫になったので右側だけ使っている。

主人は亡くなられたが、奥様が頑張っておられて、娘夫婦が別店舗で営業をしている。

品揃えは特段珍しいというわけでもないのだけど、しかし・・・わたしはこの古本屋で品定めをすることで、本との付き合いがより深くなっていったのだった。

帰省するたびに顔を出して、奥様と軽く会話をする。奥様がわたしを述懐するとき、こう仰られた。

「子供のときのあなたねえ、とてもつまらなそうな顔でじっと本棚をみつめているものだから、どうしたのかな、大丈夫かなといつも思っていましたよ。」

思わず苦笑してしまう。そんなにつまらなかったのかなあ・・・じつはこのお店で高橋留美子の『うる星やつら』『めぞん一刻』を知ったし、手塚治虫だってあった。新潮文庫や岩波文庫の多様さを知ったのもこのお店なんだし。それに『うる星やつら』の全巻はここでまとめ買いしたんだよ。

「ええー、そうですかねえ。」

と否定するのだった。いろんな本を通り過ぎた現在、ここに戻ってくるとあのときの、小学生のときの自分に出会えそうな気がしてくる。

2012年 12月 30日(日) 00時04分53秒
壬辰の年(閏年) 師走 三十日 乙丑の日
子の刻 三つ


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