(画像は有坂亜由夢さんのタンブラーより)
イメージの祖父。
祖父のイメージ。
老いた男性が棺桶らしいものに包まれる。これは宇宙人『じじい -おわりのはじまり-』の映像でつかわれたものだと思う。連さんがそのときに一瞬顔をのぞかせる。《おにわ》はこのようなところから始まる。死を考えざるをえない。
祖父は自分の棺桶 — 箱のなかで庭をつくる。
わたしの祖父も自分の庭をもっていた。
女性(おいたま)が祖父と出会う。
わたしは去年の11月、祖父を亡くした。そのときは台湾に滞在する準備で慌ただしいときで東海道線で母に「台湾にいるとき、祖父にもしものことがあったらどうしようかな」と冗談めかしたことをLINEで送ったら、しばらくして東京駅かそのあたりで母からLINEで返信がある。
「いま、おじいさんがなくなったよ」
とあった。振り返って車窓から外を見上げたら、雲一つない空が広がっていた。ああ、おじいさん・・・台湾にいるから気をつかってくれたのかなと思いながら、芸大まで吉田晋之介さん《午前3時3分の底 -ひも億-》を見に行った。おかげで彼の絵と祖父の命日はつながっている。
祖父の火葬のとき、祖父の頭蓋骨が焼け崩れることなく、そのままごろんと転がっていた。
「おにわ」の「まつげ男」(とわたしは呼んでいる)の口元はけっこうな美少年を思わせる。稲妻のような絵が壁に描かれたコンビニエンストア。超巨大な木造建築物をかけあがっていくまつげ男。ふわふわした犬。滝のようにあふれるコーヒー。箱につつまれていく女。祖父が手 にする湯のみのおにわ。引き抜かれる富士山。さわると砕け散るスマートフォン。女性は箱に包まれて鍾乳洞をおりていく。口紅をつけるおいたま(セクシー・・・)。古代において鏡の力は、そのものが映ることだったとされる。キラーンとした窓。積木の彩り。あいかわらず何かが常に飛んでいるのも最後の手段らしい。
「おにわ」については、製作中のレポートで有坂さんが語っているところがある。
・・・『おにわ』は影なんです。光に対しての影、つまり裏面といいますか。民話や神話の要素に加えて実写映像も入れて、よりディープな作品にしたいと思っています。
祖父のおにわの空が一気に開かれると同時に、祖父の精神も弾けていて、希望に包まれている。わたしが亡くなるときもこうであってほしい、できることなら。
祖父は母に「ともたけは?」ときいたという。
それが最後の言葉だった。わたしは祖父の頭蓋骨をみながら、動かない口から紡がれる言葉を見ていた。
イメージの祖父。
祖父のイメージ。
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