絵の見せ方 — ある家の方法

道を歩いていたら、こんな家をみかけた。立派な構えで、戦前の建築のようにもみえる。庭の木が剪定されていることや郵便受けの具合からして、人が住んでいる気配がする。この家の前をとおったとき、玄関先に目をひくものがあった。黄色いものだ。

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一見してすぐわかるけれど、正月を意識した油彩画だった(注連縄が飾っていなかったけど)。この絵は二枚あり、バックが同じ黄色なのでペアで制作されたものであろうか。
たしかにこの玄関先に華を添えている。まず、この家はどなたが住んでいるのだろう?ちょっとたずねてみると、もともとこの家は皮膚科かなにかを経営していたお医者さんが住んでいた家で、現在はその娘さんが絵を描くのだという。それを飾っているものらしい。それ以上の情報を得ることはできなかった。

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これは松の絵だね。とくに目を引くような技術はないけれども、しかし・・・戸の前にこのように飾ること自体がとてもおもしろい。背景の黄色も目立っているためか、つい見入られてしまった。そして二階にあるカーテンもその娘さんによるものらしい。

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なんというか、お菓子で有名な「ひよこ」をモチーフにしたかのようにもみえるし、海か山かわからないけれども、鳥に木かあるいは魚に珊瑚なのか・・・そんな柄のちょっと印象に残るカーテンもデザインされていた。戸袋にあたるところが壊れてしまっているのも時代を感じる。

それぞれの絵やカーテンは特段、目をひくものではないのに、この家と一緒になることで相乗効果以上のものが感じられる。このような感覚に似ていることといえば、中世の教会をみればわかるように、聖像を門の前に飾ることで、その教会の信仰の強さをみせることがある。しかしその聖像たちはアーチといった建築を形成する諸部材と一体化していて、それゆえにより強く目を奪われてしまうことがある。そのようなことに似ているかもしれない。

現在、美しいもの、美術品はギャラリーや美術館に収蔵されて、ガラスのなかで生きていて、それは護っていかなければならないが、このような、特段の洗練された技術が施されているわけでもなく、いつか朽ちていくであろう運命にあるかもしれない、あるいはその家の家族たちのあいだで飾ったり、季節によって絵を替えたりするような絵も当然ながらある。それらを見せるとき、ただ室内に置くのではなくて、正月の気分にあわせるかのように飾り、道をあるく人たちに何らかのメッセージを伝えるかのような身振りをする絵にわたしは心を奪われることがあることを正直に白状しておきたい。

2013年 1月 05日(土) 21時36分55秒
癸巳の年 睦月 五日 辛未の日
亥の刻 二つ


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