松木武彦『列島創世記』- 岡本太郎がみた火焔土器について

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この本は話題になり、サントリー学芸賞を受賞しておられるため、あちこちで言及が見られます。とりわけ、このブログでは細かな応答までされていますので、ここでは要点のみ述べておきましょう。
まず、この本の指針は3つにまとめられると著者の松木武彦さんはいいます。

1、マルクス=エンゲルスによる史的唯物論を見直し、考古学を「サイエンス」だと考え、認知考古学を用いつつ、旧石器時代から前五世紀の4万年のうち、日本列島で起きたことを書き出す。

2、この4万年のあいだに起きた地球環境の変動を歴史のなかに組み込むこと。

壮大な目的です。わたしたちは義務教育のなかで縄文、弥生、古墳時代・・・とそれぞれの時代について習いましたが、しかしこの本は最新の研究成果をふんだんに取り込んで、新たな可能性をできるだけ示そうという意欲があるように思われます。

松木もいうように、この時代には文字資料が無く、発掘物をもって分析するわけですが、しかしそれだけでなく地層に残った花粉を分析することで当時の気候を推定する古気候学の成果を活用しています。つまり、暖かくなったり寒くなったりすることで、旧石器時代から古墳時代に起こりうる、人たちの動きや集落、社会の状況を考察しようとしているところがユニークです。発掘物されたものを分析することで、当時のひとが何を食べていたか、それをどのように得ていたのか、建築の規模はどうであったか・・・といった、いうならば「痕跡」をもとに考察しているところに特徴があります。

この時代における気候をまとめると以下のようになります。

A 第一寒冷化期:後期旧石器後半の約2万年前まで
B 第一温暖化期:後期旧石器後半から縄文前期、約2万年前から7千、6千年前まで
C 第二寒冷化期:縄文前期から晩期、7千、6千年前から2800〜2700年前まで
D 第二温暖化期:弥生前半 2800、2700年前から紀元前後まで
E 第三寒冷化期:弥生後半から古墳時代を経て奈良時代後半の紀元前後から後8世紀末ごろまで

簡単にまとめると、Bは温暖化することで、植物資源への依存度が増すと同時に「定住」の形が生まれたといいます。Cは寒冷化することで、資源が少なくなってしまい、定住の形ではなくて資源を求めてノマドのように動き回る社会となっていきます。岡山で発見された4500年前の土器よりイネの痕跡が認められるため、少なくともこのときまでには存在していたことがわかっています(すなわち、縄文にイネの存在が認められるということ)。
そして、縄文後期には東西の人口比が変容しはじめ、西の人口が増加していることがわかります。すなわち、寒くなることで暖かい西のほうに移動しているというのです。
Eは寒冷化することで危機的になった農耕を立て直すために鉄への依存度が高まるといいます。

ところで、縄文について「日本の基層文化」であると従来から指摘されてきたのですが、松木はこれを否定し、現代の日本文化とはとても遠いものであると指摘しています。
そして、弥生の特徴として「水田」「武器」「環濠」が存在することが縄文との違いだといいますが、これらを検討することで、日本列島全体が弥生というひとつの文化になっていたのではないといいます。すなわち、外の弥生化(大陸から伝わる文化・思想)と内の弥生化(縄文後半の文化)のバランスによってそれぞれの地域で異なる文化が生じていたと指摘します。

戦後を代表するアーティスト・岡本太郎は「芸術は爆発だ!」といい、縄文文化を高く評価していたことはよくしられていますが、岡本が評価する、あの燃えているような感じの馬高式土器(火炎土器)は縄文中期の7000〜4500年前のものであるといいます(東京国立博物館が所蔵するものは)。そして、松木によると、この時代こそもっとも縄文土器が派手だったといいます。その理由としては2つをとりあげています。

ひとつは、この時代において定住がスタンダードであったということです。火炎土器など派手な土器がつくられた地域は関東・甲信越・東北南部というのは環状集落(円を描くように小屋が囲み、中心には墓がある)がもっとも発達しているといいます。

ふたつめは、この定住によってコミュニケーションの密度が高まった結果として、「人工物に機能以外の「凝り」を盛り込み、強いメッセージ性を付与する傾向」があるといいます。

すなわち、岡本が絶賛する土器がつくられた経緯としては、移動と定住が繰り返される縄文時代において、東日本で定住という環境下にある人がコミュニケーションを深めていく過程で作られたと松木は考えているのです。

2013年 3月 21日(木) 23時26分41秒
癸巳の年 弥生 二十一日 丙戌の日
子の刻 一つ


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