歪んだ柱

広島。長崎。わたしは今年、原爆が落ちた街を訪れた。

いろいろと思うことはあるが、長崎の興福寺というお寺を訪れた時の話をしたい。ここは、実は長崎盲唖院の唯一の遺構が残されているお寺だ。桜馬場に新し い校舎が建てられる前、長崎聖堂で授業をしていた。その遺構がこのお寺にあるのだ。それをひととおり見学させていただいた。その後、美味しいお茶をいただ きながらお住職にお寺の歴史についてお話を伺っていた。お寺の雰囲気からわかるように、黄檗宗の寺院である(長崎と中国・西洋と盲唖教育というテーマもひ じょうに興味深いのだが)。

そのなかで、お住職はあれを見てごらん、と本堂の回廊を指さされた。そこには柱が建っている。

「柱が曲がっているのがわかりますか?」

「ええ、わかります。」

「あれは、原爆で倒れたんですよ」

えっ、と思った。というのはこの興福寺は長崎の市街地の南の方にあり、やや離れているのであったから。原爆による爆風が山を越え、市街地を走り抜けるとともに、建築をなぎ倒していった。

その瞬間、わたしの目にはある柱は、柱でなくなった。これは、まぎれもなく、原爆の永遠の、証言者なのだ。

倒されて曲がってしまった証言者は再び体を起こして、かつての場所から動くことなく建っている。これこそが重要であった。


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