ブックフェア「表象文化論のアトラス」の感想

表象文化論学会全国大会(7/7-8)との連動企画としてのブックフェアが始まりました。
場所はMARUZEN&ジュンク堂渋谷店です。

田中純先生、学会にて今年度の学会賞を受賞された大橋完太郎さん、奨励賞の小澤京子さん、鯖江秀樹さんの4名によって選ばれた本が並べられている。上の写真がブックフェアの全景。左から田中、小澤、大橋、鯖江という並びになっています。


各氏のブックリスト。

しかも、各氏のコメントがついたブックリストも無料配布。これは行くしかないでしょう!

早速、ざっと拝見しました(というか、微力ながらお手伝いさせていただきました)。以下、思いつくままに。何の本かは実際に見てほしいので、基本的に著者の名前だけ挙げさせてもらいます。

左から田中純、小澤京子の棚(茶色のPOPが小澤さん)。

田中先生のタイトルは「イメージの宇宙を旅するための57 冊──『ムネモシュネ・アトラス』とアビ・ヴァールブルクをめぐる書物の星座」
先生のブログでも紹介されています。「ヴァールブルク銀河」ではヴァールブルクをはじめとし、カッシーラー、ダミッシュ、ストイキツァ、クリステヴァなど。見ていると美学/美術史において絶対に欠かせない本ばかり、それに岡本源太さん、平倉圭さんの名前も。それよりも「膨張するヴァールブルクの宇宙」「共振する巨星たち」といった、まるで柄澤齊が彫る宇宙の木版画を思わせるようなタイトルのもと、本が集められているところが強く脳裏に刻まれ、がっちりした強いイメージがしました。しかし、どこか幻惑的な、漂うような雰囲気もあった。目立っていたヘンリー・ダーガーのせいだろうか。6月30日にヴァールブルクのシンポジウムがあり、これも見逃せない。

小澤さんは「解剖学的眼差しのためのブックガイド」
小澤さんはブックリストを「0」から始めているのだね。ゼロには自著『都市の解剖学』を挙げているのだけれど、ゼロ、無から自著をもってくるというのがなんとも気持ちよい。彼女はピラネージをはじめとする建築をとりあげているわけだが・・・。
ウートラム、アラス、フーコー、バルト。ここまでは良い意味でも悪い意味でも貫通しなければならないイメージとして、「そうだよね」と彼女に同意する。
でも、そのあとがおもしろい。楠本まき、アスマン(読んだことない)、アグレスト(あれ、これも読んだことがない)あたりは小澤さんの精神に触れた気がする。あるいは、西村清和、コーリン・ロウなどいくつかわたしの大好きな本も。

左上が大橋完太郎の棚の一部、あとは鯖江秀樹の棚。

大橋さんは「啓蒙からポストモダンへ 「世界を読む」ための50+α」
すごく面白かった。面白かった、というのはわたしの知らない言葉が並べられているという意味でもあるし、そして、榑沼範久さんのように知覚論を講じている方と重なる部分があり、そしてそうじゃない部分の違いという意味でも。そのような二重性がすごくよかったんだよね。ディドロの著作集からはじまり(大橋さんの世界観の始まりを見せられたような気持ち・・・)、ルソー、ヴォルテール、ダランベール・・・一気にブレーデカンプ。最近出た隠岐さや香さんを経由して、一気にフーコー、セール、スタフォード、ロバート・ダーントン。ふうと息をつく暇もなく、ゴンブリッチ、バルトルシャイティス、ストイキツァ、アガンベンと重量感のある人たち。でもまだ終わらないんだよ。田中純、岡田温司と続き、管啓次郎で締める。
何か心地よいぐったり感が得られるようなセレクション。大橋さんのコメント、最後に「何一つ分からなくても心配しなくていい。「本は読めない」ものなのだから。今こそ、読め。」

最後は鯖江さん「「厄介な近代」を繙くための53冊」
わたしは鯖江さんと面識があって、それは彼の発表だったのだが、グラムシの話をしていたんですよね。グラムシが牢獄にいたときの話だったろうか。それで、このリストはグラムシの本からはじまっていて、鯖江さんにとって重要な出発点だったのだなと改めて。テクストを読むと鯖江さんはグラムシの『獄中ノート』の完全新版の翻訳を希望されておられるようだけれど、まさにそれこそ鯖江さんのお仕事ではないのだろうか。背中を押してあげたい。
カルヴィーノ、ギンズブルグ、ヴィットリーニとイタリア思想の名前が続く。フォーティ『言葉と建築』もセレクトされている。ここから鯖江さんのなかにある建築観がじわーときたのだけれど建築の本も多い。カウフマンや吉田鋼市など。
鯖江さんのテクストには「これまで自分が何を読み、それをいかに糧として生きてきたかを振り返る作業となった。」と書いている。そうね・・・わたしもそうだけれど、本を糧にする、かあ。わたしは本を敵だと思うこともあるなあと改めて気付いた。

7月31日までです。よろしくどうぞ。


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