雪村自賛自画像の解説例

今更、といわれるかもしれないけれど、田中一松先生の「雪村自賛自画像の一考察」『國華』71、28頁を改めてチェックした。
雪村自画像は、大和文華館にあって、2、3回ぐらい見たことがある。現存するなかでは日本最初の自画像ではないかという話もきいたことがある。その経緯は田中先生によれば、「美術研究」(198号、昭和33年)にて紹介したのを矢代幸雄が読み、収蔵したという。
それで、これはかつて「月下僧像」とされていたが、上記の田中論文によって今の名前になった。田中先生によるこの自画像の記述も簡潔にして要を得ているので、ここでも箇条書きに記述しておいて参考にしておきたい(國華だから、旧字使いになっているけれどもここでは直しておきます)。

・節の多い竹幹を曲げて作った肘掛け付きの座椅子に、鹿か猪の皮か、斑点の多い毛皮を敷きかけて安座している像である。
・白い髭髪を薄くはやした僧侶の風姿で、淡い青藍色の法衣に茶褐色の輪袈裟を掛け、両手に如意を把っている。
・顔貌は素描の上を繊細な墨線でかきおこし、更に肉色の隈取りや髭髪の胡粉線を施して如実な描写に努めている。
・皺ばんでいるがさほど痩せ衰えぬ老僧の風貌には独特の印象深い表現が見られる。
・法衣や袈裟や椅子などの描写もこれに準じ、墨線の上に色線を重ね隈取りを施している。
・毛皮の描写でも繊細な点までよく細かな毛がきを入れている。
以上、このような写実的な描写態度、殊に面貌の描写に細心な注意を集中して、個性的な表現をねらった精緻な作風には、単なる人物がの領域を越えて特定の個人的風貌の表現を意図した画像として写実性を認めざるを得ない。

ここまで、田中先生による解説。
それで田中先生が驚くのは、背景にある、雪の山と月だという。「極めて風変わりなものであるからおどろかざるを得ない」と書いている。というのも、「うす墨の空に月光が冴えわたって、岩山が雪の花をくっきりと浮き立たせた向こうには、遠山が他所等に深くにじんでみえる光景である。このような光景は、肖像画としてまさに常套を逸したもの」という。

これを読み進めるには、林進『日本近世絵画の図像学: 趣向と深意』も併読する必要がある。この本に収録された論文では「継雪村老」とある落款の位置に注目している。要するにこの落款が添えられた詩賛のなかに入り込んでいるというのだ。つまり、「月明前」というところが「継雪村老」の部分を修飾するという。月の前にいるのは雪村であると読み取れると主張している。

ここのところだね。続けて林さんは詩の分析をされていて、田中先生の論文をより展開していえる、と。


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