川村清雄の和魂洋才

目黒区美術館の「もうひとつの川村清雄展」にいく。目黒駅から歩いていくのだけど、春に行くと桜がきれいなんだよね。このあたりは。
川村は江戸東京博物館と目黒区美術館で開催というこれ以上考えられないタイミングで回顧展が開催されていた。この二館で開催されたのはたまたまとは思えない、生年160周年だし、そのためなのだろうか。江戸東京では『形見の直垂』(上の画像)が展示されていた。勝海舟の胸像を見つめようとしている女性が勝との微妙な関係を思わせる作品。

目黒区美術館は主に出版業をしていた加島虎吉のコレクションをもとに展示されていたけれど、川村が装幀をしていたことはまったく知らなかった。

川村は黒・朱漆や絹の下地に油彩をするという、日本的なものと洋画的なものをミックス・・・いや、ミックスじゃなくて一体として捉えている画家だったと思うような展覧会。内国勧業博覧会のように、諸外国への輸出という戦略性を帯びていたイベントで漆や七宝が高く評価されていることと共鳴しているような気もした。そういう気がするだけだけれど。

絹の上に油彩というと、油の混ぜ方や膠を工夫したりしたんじゃないかとおもうけれど、キャプションを見るからにどうやったのか不明としており、そこまで分析はされていないようだ。たしかに漆のうえに油彩というのはキャンバスのようにやるとすべってしまうだろう。
絹は金地、銀地を使っていることがほとんどでよくみると、絹の上にべったりと絵の具をぬるのではなくて、絹の肌目を花や鳥などの境界線に残している。こうすることで対象が光沢感をより帯びる効果が得られている。日本画の重要な技法に裏彩色があるけれども、それを別のベクトルで生かしているかのような筆運びをしている。べったりと横に広がる日本画と縦に隆起する油彩画。そのリズムやバランスの違いを川村はよくつかみとっていたのではないかと思う。

ところで、川村の絵画を絵ハガキにしたものがあった。写真として絵画を印刷しているもの。モノクロだった。川村をよく支えた勝海舟に西郷従道。西郷のはハガキが小さすぎてよく見えないのだが、ギターが描かれていて、子供の塑像もあって、『形見の直垂』に構成が似ている静物画。もしかしたら・・・ペアだったりしてね。

2012年 12月 15日(土) 23時24分18秒
壬辰の年(閏年) 師走 十五日 庚戌の日
子の刻 一つ


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