宮崎駿「風立ちぬ」の感想

宮崎駿「風立ちぬ」の日本語字幕版が公開されたので見てきました。場所は横浜ブルク13、シアター5。席はI-11。真正面にスクリーンがあって、見やすい席。

見終わったあと、二郎と菜穂子はずるいなと思った。

ポール・ヴィリリオはこう書いていたのを思い出す。

「見るのではなく飛行する、それが映画だ」 Continue Reading →

アルノー・デプレシャン「魂を救え!」

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わたしが学生時代、梅本洋一先生の講義にレポートを出していた。ほとんどはダメだったけれど、このレポートに限っては「最後のところが好きだ!」と仰っていた。
以下、そのレポートの全文。今読み返すと直したいところがあって恥ずかしいけれども、先生のことをちょっと思い出すために。
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突然炎のごとく — 梅本洋一

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keyword:梅本洋一/デプレシャン/魂を救え

2013年 3月 12日(火) 23時25分00秒
癸巳の年 弥生 十二日 丁丑の日
子の刻 一つ

ヴェネツィア・セックス

ニコラス・ローグ『赤い影』をみた。ふつうにTSUTAYAでレンタルできる。
以下、ネタバレにならないよう、注意して書きます。

この映画の原題は”Don’t Look Now”だが、邦題『赤い影』としているのは目をひくためなのだろう。確かにワンポイントの赤がテーマで、わけがわからないまま最後まで見てしまう。ラストシーンになって、ああこういうことだったのかと理解するけれども、理解できたときはもう遅い。そんな、もはや取り戻せない感覚があとに残る映画だったように思う。

主人公のジョン・バクスター(ドナルド・サザーランド)が修道院修復の仕事をしているという設定でヴェネツィアに妻ローラ(ジュリー・クリスティ)とやってくるという設定になっていた。
たしかに、ヴェネツィアのシンボルがちらちらと見える。たとえばこの左にみえるのは、いわずとしれたドゥカーレ宮殿だよね。

建築史の授業で初めて知った建築と映画で再会すると、また新しい発想ができるのも映画をみる楽しみだと思う。記憶術としてイメージがより強化される。

話はかわるが、調べてみると、この映画、セックスシーンが有名らしい。 Continue Reading →

ヴェネツィアに行くなら

ヴェネツィアに行くまえにぜひとも見ておきたいと思っていた映画があって、それがニコラス・ローグの『赤い影』という映画。IMDbはこちら。これを借りてきたので作業のあいまにみることにした。
ドナルド・サザーランドが主演なんだね、彼が演じる主人公は修道院修復専門の仕事をしていて、妻とともにヴェネツィアを訪問するという内容らしい。ヴェネツィアの街並がどう映るのかみておきたい。

ジネヴラとタルコフスキー

アンドレイ・タルコフスキー「鏡」をみていると、1コマ、1コマが光とともにやってきて、過ぎ去って行く・・・。その1コマは去っていくと、わたしのなかに押しとどめていることが難しい。あっさりと押し流していってしまう。

パンフレットなどによると、この映画はタルコフスキーの自伝的作品とされていて、作者の父母がモデルとなる男女とその子供、その子供が成長して妻ナタリアと別れる。祖母も出て来て、3世代の作品になっている。ストーリーは一貫しておらず、ひとつのシーンがひとつの記憶のようになっていて、その記憶が記憶を召喚し、あるいは別の記憶を生産するようなそんな映像だった。その理由として、母マリアと本人の妻ナタリアが同一の女優、マルガリータ・テレホワが演じている点にあると思う。つまり、どの世代なのかわからないという曖昧さが強調されているのではないだろうか。

冒頭で、草原の向こうからやってくる医師の男性をみている母マリア。医師はナンパする気があるのか、マリアに語りかけてきて、しまいにはタバコをもらって母が腰掛けている木の柵に座ろうとするが、ポッキリと折れてしまう・・・。当然ながらふたりは地面に倒れる。
そりゃあ、あんな細い木だから二人が腰掛けたら折れるのも無理もないけれども、この折れた木について、あとあと考えて見ると面白いのであとで述べる。

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美術/建築から映画をみる

ジュースキント『香水』の原作と映画について池上英洋先生( @hidehiroikegami  )とTwitterで話していたら、金沢百枝先生( @momokanazawa )からのリクエストで、建築に注目した映画の本は何があるのかというのがあった。少し長いので、Twitterではなくてここにまとめておきたい。それにしても池上先生はかなり映画が好きのようで、これはきっと素敵な仕事ができるんじゃないかと思う。

さて、美術/建築に注目した映画の本だけれども、まず一冊だけおすすめするなら?という条件であれば、わたしはこの本にしたい。 Continue Reading →

おおかみこどもの雨と雪

Twitter上で話題になっていたし、予告編が良かったので日本語字幕付き上映を待ってすぐ見に行った。
劇場は横浜ブルク13。下のフロアが紀伊国屋書店なので長居してしまいそうなスペース。スクリーンは11、席はIの11番。11番がちょうどスクリーンの中心。高さもちょうどよい感じでベストの席だったと思う。さて、この映画について感想を書いておきたい。

ネタバレ含みます。 Continue Reading →

見つめ合う男女

ダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスの『卒業』(1964)。いつだったろうか、まだ成人式を迎える前にみたことがあって。まだ見ていない人にとってはネタバレで申し訳ないけれども、教会に押し掛けて花嫁を連れ去ってしまうというのが当時はインパクトだった。好きとか一緒にいたいっていうのはこういうことなのかなあって思いながらこの映画をみていた。

でも、インパクトに残ったのは男が女をかっ攫うシーンじゃなくて、そのあと二人が乗り込んだ公共バスのなかで二人が見つめ合う、残り香のようなシーンだった。
それを5つのスクリーンショットで連続してみてみよう。 Continue Reading →

見ているだけで何もできない

視覚をめぐる政治性について、さっきピザ・マシーンを取り上げたけれど、なんか思い出す映画があって。これは旧サイトでも書いたことがあった。この映画、”Lady in a cage”というタイトルでこの女性は足が不自由で、二階から一階に降りるときに自宅内のエレベーターを使うという設定になっている。しかし、息子が出かけたあとに電気が止まってしまい、まさに籠のなかの鳥のような状況になる。そんなとき・・・というストーリー。ピザ・マシーンと共通しているのは「見ているだけで他には何もできない」というところにある。あの機械は作っているところをみることはできるが、手を加えることはできず、この映画でもケージに閉じ込められた女性は何もできない・・・。しかし、ピザ・マシーンとこの女性は立場が入れ替わっている。そういえば、「たくさんのふしぎ」という絵本でみたんだけど、動物園で檻に閉じ込められているゴリラの家族と、それを見ている人の家族のイラストがあって、閉じ込められているのは人のほうかもしれないと示唆されているというふしぎな話があった。

この写真をみると、左側は元気そうな表情でいながら、徐々に顔から生気が失われてゆくのがわかって、どんな結末が待っているのか予感させるつくりになっている。うまいなと思ったけれど、牢の格子がきちんと等間隔になっていて、冷徹なリズムを刻んでいる。

ちなみにこの女性はオリヴィア・デ・ハヴィランド。『風と共に去りぬ』でスカーレットのライバル役といえばわかる人も多いだろう。

ソクーロフ「ファウスト」

先日、ソクーロフの「ファウスト」を鑑賞。一言でいうと、見るべき映画ですね。以下、ネタバレを含みます。 Continue Reading →